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産科・最前線より―
国立病院機構 長良医療センター
産科医長 川鰭市郎 先生に聞く

今、産科の最前線医療である胎児治療が注目を集めています。 胎児治療とは、まだ出産前のお腹に赤ちゃんがいるときに行う診療のことで、高度な技術と専門的な知識を要するため、全国でも限られた施設でのみ実施されています。
今回のほすぴ応援団では、「胎児治療」のパイオニアである、長良医療センター産婦人科医長・川鰭市郎先生に「胎児治療」の現状、そして現在様々な問題を抱える産科を通して、医療の現場の声をお聞きしました。


vol.1 「胎児治療」の前に問題が山積み
医療をする側、受ける側が理解しあう場を

お腹にいる赤ちゃんの超音波写真といえば、記念写真といった程度の見方しかしていませんでしたが、超音波診断では様々なことがわかるのですね。
今の超音波診断装置からは実はたくさんの情報を得ることが出来ます。
そういう観察情報を、医療側は正しく説明すべきだし、若いお母さんやお父さんは知る権利がある。正しく知って充分理解したうえで医療選択をしていく。それこそインフォームド・コンセントですよ。

素人だからわからないと言うのではなく、医療を受ける側自身も、正しく理解する努力が必要ですね。
いや、素人でいいんですよ。
だって素人の目線で疑問を投げかけなければ誰が医療を良くするんですか?私たちのセミナーは、産婦人科における国内トップクラスの先生方をお招きしていますが医療をする側の人、受ける側の人、の両方が同じテーブルで理解しあう場を提供するセミナーでもあるんです。おかげさまで、これまで行ったセミナーは多くの方に参加頂き、評価を頂きました。【第2回ママと赤ちゃん、そしてパパのための超音波セミナー 2006年7月15日(於・大阪)プログラム】こういうセミナーをやることで「患者に知恵を与えてどうするんだ」って意見を受けたこともありましたけどだけど僕たちはこういうことを発信し続けることの成果のほうがはるかに大きいと考えています。参加費用はお医者さんからは頂きますが、一般のそれこそ「素人」のかたからは一切頂きません。私達の活動はすべて手弁当での活動なので正直言えば大変ですけど、これからもどんどんこういったセミナーを開催して発信し続けていくつもりです。

全国から注目を集める「胎児治療」

先生がテレビの取材を受けられるようになってから、「胎児治療」という言葉がマスコミでも多く取り上げられようになりました。
胎児治療というのは派手ですから、見た目にも非常にね。
それこそTVで見るには映像的に派手なところがあるしアトラクティブだから、そこに集中して見られがちですけども。そこに行くまでのプロセスとしては、治療する側は当然正確な診断が必要なわけで、正確な診断が出来るためには、いろんな症例を経験できなければいけないわけです。ですからむしろ針をお腹に刺したとかいうよりも、その前段階に重要なことが山積みなんです。

胎児治療出来るお医者さんは日本でも数名だとか?
対象にもよりますが、多いとは言えないでしょう。
例えば風邪を引いて病院に行って治療するのは誰にも出来ますよね。だけど赤ちゃんが風邪を引いたか引いてないかは、なかなかわからないわけです。ただ、そういう赤ちゃんに治療を出来る人にたどりつくケースが実は限られている。だから皆さんに知って頂くというのは大事なことで、出来るだけたくさんの人に知って頂きたいと考えていますが、広めてゆきたいんだけど、それって諸刃の刃なんですね。あんまり経験が無い人が突然手を出してしまうケースがある。そういうことにならないように気をつける。僕等の学会(日本胎児治療学会)の中でも同時に訴えかけないといけないと思ってる点ですね。

お問い合わせは全国から?
あります。
特にテレビに取り上げられて以降は多いです。「時間がかかっても構わないから、今から行きたいんですけど」っておっしゃるかたもいます。でも、お腹大きい人が移動するのは大変なんですよ。「ここまでこなくとも そこだったら近くにこういう先生がいるから、そこで先生に確認とられたらいいと思いますよ」という話しはしています。

胎児治療以前に、問題が山積み。―産科の現状―

産婦人科が減っているとマスコミでも騒がれていますね。
婦人科の医者は充足しているんですよ。
ただ産科がいないんです。産科の医者が足りないということが問題なんです。これはどういうことかっていうと何か「問題のある赤ちゃん」を診れる医者の数が足りないということなんですよ。ですから「出産難民」化したという問題がマスコミでよく取り上げられていますけど、「出産難民」ということが起こってる地域は既にわかってるんです。今はそれこそTVを観たからって「車で片道4~5時間かかっても行きます」という人がいる時代じゃないですか。だから「出産難民」っていうことで表現されているのは本当に限定されている地域であって、その地域に含まれない人達が「ああ、うちは良かったね」って終わるんじゃダメですけど、日本全体で皆が抱えている問題はなにかといえば、ハイリスク出産の人達です。
「妊婦にこんな問題がある」「赤ちゃんにこんな問題がある」
そういう時に、そういうことの専門家がもの凄く少ないんです。

例えばある県で母体搬送といって、妊婦さんや赤ちゃんに問題があるとわかって専門的なところに送りましょうってことになって、送られてゆく病院が県のなかでいくつかあるわけですよ。だけど実際には専門に出来る施設は2ヶ所だけ、ということがあって赤ちゃんや妊婦さんの状態を診て、専門の先生・専門の施設を探すわけです。送られる患者さんからすると、専門的なところにゆけば自分と自分の赤ちゃんを診てくれる、より専門的な先生がいると、期待しますよね。だけど行った先には一般婦人科医しかいないってことなんです。ただあまりそれを大声でいうと患者さんが混乱をきたしますから報道には気をつけて頂きたいのですが、ただ事実を知って頂くという意味ではそういうのが実態なんです。

でも、患者さんが来たからには、産婦人科の先生だったら診てもらえると思うのですが?
とにかくお腹を切って赤ちゃんを出す。彼らがやるのはこれだけですよ。
だから日本のNICU(Neonatal Intennsiv Care Units 新生児の集中治療室)はうまくまわらないんです。帝王切開が増えるばっかりになってゆくんですよ。胎児治療っていうものの前段回ですでに問題があるってことなんです。胎児治療っていうより、胎児の診断を正確に出来る人がいない。もちろん施設が限定されるってとこもあります。

先日、東京で学会の人達と集まりがあって、それこそ酒飲みながらいろんな話が出たんですが、埼玉から母体搬送する先を探していたら、最後は東京生育医療センターまで行っちゃったという。
大変なことですよね?でも、今それが当たり前になってきてるんです。胎児治療うんぬんの前に、本当はその前段階で問題が山積みになってますね。

産科医の数はどうでしょうか?
増えていないですね。
増える方向に向いて欲しいと願っていますが、増えないですねえ。

目指す人がいない、それとも目指す人がいてもその環境がない、ということでしょうか?
両方じゃないですかね。
結局我々がやってる仕事はハイリスク・ノーリターンなんですから。今からこの仕事に入ってこようとする若い人は、よく見てますよ。ということは楽して、いい生活できる仕事があればそちらを選びたい。まあそりゃ人情ですよね。あえて厳しい環境のなかで、働きたいとかって思ってくれる人はそうは多くない。

だって、もしお子さんが医学部にいて、将来どこにいこうかって話しの時、「お父さん、僕、産科の仕事がしたいんだ」っていったら、それはいい仕事だな、と思って頂けると思うんですが、同時に非常に仕事がきつい、なおかつ訴訟が多い、何もそんな大変な道を選ばなくともいいのでは?って思うのが親の気持ちじゃないですか。
我々の環境の厳しさっていのが知られれば知られる程、そういうことになってきますね。

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